設立手続/創業者間契約

会社設立手続の流れとは?自分ですべきか専門家に依頼すべきか

弁護士監修記事
AZX Professionals Group
高橋 知洋 弁護士
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設立手続/創業者間契約

個人で新しく事業を始めたい、プロダクトを一緒に作っているチームで起業したい等、会社を作りたいと考えることはありませんか。

ベンチャー・キャピタル(VC)からの資金調達を考えているのであれば、基本的に株式会社を設立する必要がありますし、会社を設立することで銀行から融資を受けることができたり、税制面で優遇を受けることができたりします。

しかし、いざ会社を設立しようと考えても何から始めていいかわからないことが多いと思います。

この記事では、会社設立を考えている起業家や個人事業主の方を対象に、会社設立手続について、その流れを説明します。

会社設立の手続はそこまで複雑なものではありません。流れをしっかりと理解し、必要書類を適切に作成することで自分でも会社設立の手続を行うことは可能です。

※ もっとも、弁護士に依頼すれば、定款を電子定款とすることで紙の定款を作成した場合に必要な収入印紙代(約4万円)を削減できる可能性があります。そのため、依頼する弁護士が提示する報酬金額にもよるものの、弁護士に依頼することによって高額の費用がかかるというものではないとも考えられます。

なお、本記事では少人数で株式会社を設立することを前提としています。株式会社以外の会社形態(合同会社や合資会社)で会社設立する場合や、大人数(取締役会を設置したり、監査役を置く場合)で株式会社を設立する場合には当てはまらない事項もある点ご留意ください。

会社設立の流れ

まずは会社設立の流れを確認しましょう。

会社設立手続の流れは以下のとおりです。

1)会社の概要の決定

まずは、会社設立に先立ち、会社の基本的な事項を決める必要があります。

定款では細かい事項についても定める必要はありますが、まずは会社の根幹となる会社名や事業内容などを事前に決めておくことが、会社設立の手続をスムーズに進めるためには大切です。

会社名について

会社名には、使用できない文字があるほか(法務省Webサイト「商号にローマ字等を用いることについて」)、同一所在地に同じ名前の会社は存在できないというルールなどがあるため、注意が必要です。

Example

たとえば「株式会社&A」という商号は登記できません。

考えている名前の会社が存在するかどうかを調べるには、国税庁の法人番号検索が役立ちます(国税庁「法人番号検索サイト」)。

上記の通り、同一所在地でなければ、商号が他社と重複しても問題ないのですが、商号はサービス名称などとも連動することが多いので、特に一般消費者向けのサービスを想定している会社は、同一分野で同一の商号があるかという点を確認しておいた方がよいと考えます。

事業内容について

設立後の会社で実施しようとしている事業の内容によっては、その事業を行う上で許認可が必要な可能性(例えば、運送業など)や、そもそも事業内容として法律上問題がある可能性があります。

そのため、心配であれば、会社設立前に、事業内容やビジネスモデルについて弁護士等の専門家に相談した方が良いでしょう。

会社の所在地について

自宅を会社の所在地として登録することもできますが、賃貸借契約において商用利用が禁止されている場合には、会社の所在地として使用できない可能性があるほか、会社の住所は登記事項として公開されてしまうことになります。自宅を会社の所在地にしようと考えている方はこれらの点に注意が必要です。

なお、会社の所在地について、定款への記載は最小行政区画(市町村その他これに準ずる地域)に留めることが多いです。定款の内容として詳細な住所を記載してしまうと、最小行政区画内で本店を移転しようとする場合(たとえば、東京都渋谷区内で本店を移転する場合)にも、株主総会による定款変更決議が必要となってしまいます。

また、登記との関係では、地番号までの記載は必要になるものの、マンション名や部屋番号は省略することは可能であり、実際にも、これらの記載を省略することは多いです。

メンバーについて

会社は一人で設立することも可能ですが、複数人で事業のアイデアを出しあって起業したケースや、複数人で共同してプロダクトを作成している場合には、数人で会社を設立することもあります。

会社を設立する際は、株主と役員を決める必要があります。

大まかにいえば、株主は会社にお金を出して会社を所有する人、役員は会社を運営していく人です。

複数人で会社を設立することを考えている場合には、誰が役員、株主になるのかを決めておきましょう。

会社を設立する段階では、あまり深く考えずにとりあえず全員が役員と株主になることもありますが、会社を設立した後で会社の重要事項を決める際は、原則として役員の過半数や、株主の議決権数の過半数で決めることになります。

そのため、複数人で会社を設立することを考えている場合には、揉めた場合でも重要な事項を決定できるように役員を3人や5人といった奇数にすることや、1人の出資比率を50%超にすることが重要です。

2)定款、設立必要書類、ハンコ(=会社代表印)を作成する

会社設立の流れの2つ目は、定款などの必要書類の作成や、ハンコの作成です。

定款について

定款は、会社のルールを定めたもので、会社設立を行う場合には、必ず作成する必要があります。

定款の内容の細かい点までは踏み込みませんが、概ね以下の事項を内容に盛り込む必要があります。

  • 目的
  • 商号
  • 会社の所在地
  • 資本金等
  • 発起人の氏名又は名称及び住所

上記が定款に最低限定める必要のある事項ですが、実際には、株主総会の運営方法などの細かい事項についても定めることが多いです。

会社を設立する際の定款については、日本公証人連合会の雛形も参考になります。

設立必要書類について

会社設立に際しては、定款のほかに登記の際に必要となる書類を作成、準備する必要があります。

必要となる書類は、設立方法や設立時の出資の方法などによって異なるものの、一つの例としては、以下の書類が必要となります。

  • 登記申請書
  • 発起人決定書
  • 払込証明書
  • 役員の就任承諾書
  • 発起人、役員の印鑑証明書

また、会社設立の登記手続の際は、基本的に、会社の印鑑として登録するハンコが必要になりますので、ハンコの準備もしておきましょう。

3)申請、登録

出資金を払い込む

設立に必要な書類の作成が終わったら、出資金の払い込みを行いましょう。

出資金の払込時期について、従前は発起人決定日以降とする必要がありましたが、令和4年6月13日の法務省の通知により発起人決定日前の払い込みであっても有効と取り扱うことになりました(参考:発起設立の払い込みについて)。

会社の出資金は定款や発起人決定書において定めますので、そこで決めた金額を発起人の口座に入金することになります。

定款認証

作成した定款は公証役場で認証してもらう必要があります。

公証役場は全国各地にありますが、会社の所在地を管轄する公証役場である必要がありますので(東京であれば、東京の公証役場)、自分が設立する会社の所在地にあわせて公証役場を選択してください(公証役場一覧)。

定款認証を受ける前に、作成した定款の内容を公証人に事前に確認してもらうことでスムーズに手続を進めることができます。

定款認証には3万円から5万円の費用がかかります(日本公証人連合会「定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか。」)。こちらも事前に公証役場に問い合わせておきましょう。

登記

定款認証が終われば、いよいよ登記手続となります。

登記申請を行うことで会社が設立されます(登記申請日=設立日となります。)。

管轄法務局は港区なら東京法務局港出張所といったように指定がされていますので、事前に法務局のHPで確認することが大切です(法務局一覧)。

会社の設立日に希望がある場合には(例えば4月1日を設立日としたい)、その日に登記の申請を行う必要がありますので、注意が必要です。

また、定款認証と同様に、登記手続にも費用がかかりますので、事前に調べるようにしましょう。法務局に問い合わせれば教えてくれます。

会社設立の登記費用は、資本金の額に1000分の7を乗じた額となります(ただし、15万円を下回る場合には15万円)。

以上が会社設立の流れと注意点になります。

会社設立の手続は、法律で定められた手続に則って行う必要があるため、自分で行うことが不安であれば弁護士などの専門家に依頼した方がスムーズです。

会社設立手続の失敗例

会社設立の流れは上記のとおりでした。

上記の流れに従って書類をしっかりと作成すれば、自分で会社を設立することも可能です。

しかし、書類の内容を十分に吟味していない場合やしっかりと手続を踏んでいない場合には、会社を設立することができないという事態や、設立後に会社をスムーズに運営できない事態にもなりかねません。

自分で会社設立の手続をしようと考えている方は次のような失敗に気をつけましょう。

失敗例①

定款などの書類がしっかり作れていない(内容、定款認証のミス)。

定款をはじめとする各書類は、定款認証や登記手続の際に公証役場や法務局に提出するものとなります。

書類の内容に不備があれば、定款認証してもらえない可能性や、登記が受理されず、会社が設立できない可能性があります。

また、各書類については作成日などの日付を記載する必要があります。

基本的な書類の日付の流れとしては①発起人決定書、②定款、③就任承諾書、④払込証明書という流れになるのですが、日付の前後を間違えてしまうと登記が受理されない可能性があります。

そのため、自分で会社設立の手続を行う場合には、定款については事前に公証役場に必ず確認してもらい、登記に必要な書類については、法務局に事前に相談することや、法務局HPの雛形を参考にして作成することが大切です。

失敗例②

出資金の払い込みを忘れる。

会社の設立には、出資金の払い込みが不可欠です。

出資金の払い込みは、登記を申請するまでであればいつでも行うことが可能です。

出資金の払い込みをしないまま登記の申請を行っても登記が受理されず、会社が設立できないため、出資金の払い込みは余裕をもって行うことが大切です。

また、出資金を払い込むのは、発起人の銀行口座になります。

発起人以外の銀行口座(例えば、友人や役員になる予定の方の口座)に振り込んでしまうと登記が受理されない可能性がありますので、出資金を払い込む銀行口座には注意しましょう。

失敗例③

登記を忘れる。

会社の設立は登記の申請を行わないと完了しません。

定款などの書類を作成し、出資金の払い込みを行なっただけでは会社設立手続が完了しない点には十分に注意が必要です。

特に会社設立日にこだわりがある場合には、設立希望日に登記申請を忘れてしまうと設立日がずれてしまうため、スケジュール管理には注意が必要です。

失敗例④

発行株式数を過度に少なく設定してしまう。

失敗例①から③までと異なり、この失敗例④は会社の設立自体に失敗する例ではありませんが、設立後の会社のスムーズな運営に支障をきたしてしまう失敗例になります。

たとえば、発行株式の数を10株としてしまうと、設立後に参加してくれるメンバーに株式やストックオプションを与えようとした場合に、1株でも付与すると10%の持分を放出しないといけない事態になりますし、VCから出資を受けるタイミングでは、ほぼ確実に株式分割をせざるを得ないことになります。

このような事態を避けるため、発行株式は1万株程度とする方が望ましいと考えられます。

失敗例⑤

深く考えず、公告方法を電子公告としてしまう。

会社は必要に応じて決算公告などの公告を行う必要がありますが、この公告の方法として、電子公告を選ぶことができます。

しかし、電子公告を選ぶと、決算公告をする場合に貸借対照表の全文を掲載しなければならないなどの負担が生じてしまう点には注意が必要です。この点を理解した上で、この負担を受け入れてでも電子公告による官報掲載費用の削減といったメリットを享受することを選択するか否かを検討する必要があります。

なお、この失敗例⑤のように、定款内容の定め方によって設立後の会社のスムーズな運営に支障が生じる例は他にもいくつか考えられます(定款に必要な定めを置いておけば省略できる決議が省略できないなど。)。設立後のスムーズな会社運営のためにも、ご不安のある方は、会社設立を弁護士に相談するのが良いかもしれません。

会社設立は弁護士に相談すべきか

会社設立の手続を行う場合の失敗例について説明しましたが、自分で会社設立手続の全てを行おうとするとミスが起こってしまう可能性が否定できません。

そのため、自分で会社設立の手続を行うのではなく、弁護士などの専門家に会社設立の手続を依頼することも選択肢として検討する方が良いと考えます。

会社設立の手続を自分ではなく、弁護士に依頼することのメリットについて解説します。

メリット①

設立後の会社のスムーズな運営も見据えて、会社設立に必要な各書類をミスなく作成できる。

自分で会社設立の手続を行う場合に多いのが、やはり設立手続の書類のミスです。

定款の内容が不十分であったり、日付を間違えたりすることが多いため、弁護士に依頼することでミスのない書類を作成することができます。

また、上記「会社設立手続の失敗例」の失敗例④や失敗例⑤からも分かるように、会社設立手続に必要な各書類については、設立後に会社のスムーズな運営を実現することを見据えて作成していく必要があります。

設立手続を弁護士に依頼することで、設立手続の際に作成した書類の内容が設立後のスムーズな会社運営の支障となってしまう事態を避けられると考えられます。

メリット②

スケジュールの作成/管理も依頼できる。

会社設立の手続では、スケジュール管理が大切です。

自分で会社設立の手続を行おうとすると、いつ何の書類を作成すれば良いのか、定款認証や登記はどのタイミングですれば良いかわからないこともあります。

また、会社設立日に希望がある場合には、スケジュール管理を徹底する必要がありますが、他の仕事で忙しかったりすると登記申請を忘れてしまったりすることもあるでしょう。

会社設立の手続を弁護士に依頼すれば、設立の完了までにいつ、何をすればいいかスケジュールを立ててもらえますし、設立希望日に登記を申請できないということもありません。

メリット③

設立後のサポートも依頼できる。

会社設立は事業のスタートにすぎません。

会社を運営していくと、取引のために契約を締結する必要があるほか、サービスを運営していく中で法的な問題に直面することがあります。

会社の設立を弁護士に依頼しておけば、その後に法的サポートが必要な場面が生じても、設立からあなたの会社を知っている弁護士に対して依頼をすることで、的確なアドバイスを受けることができます。

また、法的な問題以外でも、会社設立後は、税務や労務といったことにも取り組む必要があるところ、弁護士のつながりで税理士などの専門家を見つけやすくなる可能性もあります。

会社設立の手続を弁護士に依頼することは、ミスなく会社を設立できるという点だけでなく、会社設立後のサポートを行ってもらえるという点でメリットがあるといえるでしょう。

最後に

この記事では、会社設立の手続の流れについて、概要や注意点、弁護士に依頼することのメリットを記載しました。

事業をスタートするためには、まずは会社を設立する必要があります。

会社設立の手続自体はそこまで難しくなく、インターネットの情報や法務局に相談することによって自分で行うことも可能と考えます。

しかし、時間がない中で、自分で必要書類の全てを作成して手続を行うことにも限界があるかもしれません。また、設立後に法的アドバイスなどのサポートが必要な局面に遭遇する可能性もあります。そのため、特に早期に事業拡大に集中したいと考えられている方や、設立後に法的アドバイスなどのサポートを受ける必要があると考えられている方は、弁護士などの専門家に会社設立手続のサポートを依頼する方が良いかもしれません。

冒頭記載のとおり、弁護士に依頼すれば、定款を電子定款とすることで紙の定款を作成した場合に必要な収入印紙代を削減できる可能性があることから、依頼する弁護士が提示する報酬金額にもよるものの、弁護士に依頼することによって高額の費用がかかるというものではないとも考えられます。

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