航空法改正と日本におけるドローンビジネスの可能性(その1)

弁護士執筆記事
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我有 隆司 弁護士
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ビジネスモデル審査

経済産業省によって公開されている「空の移動革命に向けたロードマップ」を見ると,人やモノが空を飛び交う未来が,我々が期待するそんな未来が,すぐそこまでやってきている気分になります。

そんな中,航空法の改正が2019年9月にも2022年6月にも行われてきましたが,2022年12月頃,今までの改正よりさらにインパクトのある改正が行われます(国土交通省「無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会 中間とりまとめ」参照)。

今回の記事では,海外スタートアップでの事例を紹介しつつ,航空法改正によって日本においても海外スタートアップのようなドローンビジネスが可能になる余地が生まれたのか,大まかに考えてみようと思います。

ドローンを用いた海外スタートアップでの取組み

海外でのドローンを活用したスタートアップビジネスを見てみると,例えばZipline International Inc.というスタートアップが,ドローン物流の分野で,医療関係の物資をドローンで運搬するビジネスを展開しています。

ルワンダやガーナでの地方の医療機関への血液や医療機器の配送,農村部の方々へのワクチンの配送等を既に行っており,アメリカでも本格的に配送サービスを開始しつつあるようです。

こういうことが日本でもできるようになるのか気になりますよね。

今回の日本における航空法改正は「第三者上空の目視外飛行(レベル4飛行)の実現」というのが一つの目的になっていますが,Zipline社のようなドローンを使用したデリバリーサービスも日本国内で実現できるようになるのでしょうか。

医療関係の物資に限らず,市街地に住む人にドローンを使用して生活物資を届けに行くようなデリバリーサービスを想定しながら考えてみましょう。

結論

航空法の具体的な規定内容は少し複雑なので,結論だけ示すと以下の通りです。

  1. 改正航空法との関係で,市街地に住む人にドローンを使用して生活物資を届けに行くようなデリバリーサービスを行うために必要なのは,操縦者がライセンスをとって,ドローンが機体認証を受けて,さらに飛行についての許可と承認を受けること。
  2. 市街地でデリバリーサービスを行う場合を想定した許可基準が示されるところまでは至っていないので,法改正によって,市街地でドローンを利用したデリバリーサービスができるようになるとまでは言えない。
  3. ドローンを活用したビジネスとして,どのようなものであれば実現可能かを検討するためには,国交省からこれから開示される情報に注目する必要がある。

では,もう少し具体的に見てみましょう。

ドローンを用いたデリバリーサービスと改正航空法との関係

改正航空法の規制概要

改正航空法では,飛行のリスクに応じて必要になる許認可について改めて整理されており,大まかにまとめると以下のようになります。

内容規制概要
カテゴリーⅠ・飛行禁止空域を飛行せず,かつ,法令上制限される飛行方法を行わない・ライセンス不要
・機体認証も不要
・飛行についての許認可不要
カテゴリーⅡ・飛行禁止空域を飛行するか,法令上制限される飛行方法を行う
・立入管理措置を講じる
・二等ライセンス必要
・第二種機体認証が必要
・飛行についての許認可不要(一部個別審査が必要)
カテゴリーⅢ・飛行禁止空域を飛行するか,法令上制限される飛行方法を行う
・立入管理措置を講じない
・一等ライセンス必要
・第一種機体認証が必要
・飛行についての許可又は承認が必要

上の表をフローチャートでまとめ直すと,以下のようになります(上記「無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会中間とりまとめ」の資料中の図をさらに簡略化しています。)

ドローン規制整理図

ドローンを使用したデリバリーサービスの場合の適用について

市街地に住む人にドローンを使用して生活物資を届けに行くようなデリバリーサービスの場合に,上記の規制を適用すると,以下のようになります。

  1. 上記の「飛行禁止空域」には,人や家屋が密集している地域の上空が含まれるので,サービス利用者のところまで自由にモノを運搬しようとすると「飛行禁止空域」の飛行が生じそう。
  2. 「法令上制限を受ける飛行方法」には,目視外で飛行させることや,人や物件と30メートル未満まで近づいて飛行することも該当することになるため,デリバリーサービスを行う場合には,制限された飛行方法で飛ぶことにもなりそう。
  3. サービス利用者のところにモノを届けるのに,「立入管理措置」を常に行うのは現実的でないため,「立入管理措置」については講じないという前提になりそう。

以上のことから,改正航空法との関係では,市街地に住む人にドローンを使用して生活物資を届けに行くようなデリバリーサービスは,上記表のカテゴリーⅢに該当して,ドローンを操縦するための一等ライセンスが必要であることに加えて,第一種機体認証を受けた機体を利用する必要があり,飛行についての許可又は承認を取得する必要があるということになりそうです。

ドローンを使ったデリバリーサービスは改正航空法によって可能になるのか

上記の通り,改正航空法との関係では,市街地に住む人にドローンを使用して生活物資を届けに行くようなデリバリーサービスを行うためには,ライセンスと機体認証を受けた上で,さらに飛行についての許可又は承認を受ける必要があります。

それらの手続きを行えばドローンを使ったデリバリーサービスを行うことができるのかというと,現時点では,有人地帯でドローンの飛行を行うことを前提とした許可基準等が具体的に示される状況にはないので,今回の法改正だけで,ただちにドローンを使ったデリバリーサービスが実現可能になったとは言えません。

改正航空法によって,将来的に市街地でドローンデリバリーサービスを行う場合にどのような規制を受けることになるのか大まかな見通しは立ったとも思いますが,そのようなサービスを実際に行うためには,有人地帯でドローンの飛行を行うことを前提とした具体的な許可・承認の基準等が示されるのを待つ必要があります。

日本国内で市街地でドローンデリバリーサービスを展開できるような許可基準等の整備が進むのはもう少し時間がかかりそうではありますが,どのようなビジネスモデルであればドローンを活用したビジネスとして実現可能か,将来的にドローンデリバリーサービスを展開するためにどんなビジネスから始められそうか,といったことを考えるためにも,これからの国土交通省の動向に注目が必要です。

今後の動向について

上記の通り,ドローンを使ったビジネスを検討している起業家にとって,今後どのような基準で,ドローン飛行(特に有人地帯における目視外飛行)についての許可等が行われるかは,注目するべきひとつのポイントになります。

現時点では,「無人航空機の目視外及び第三者上空等での飛行に関する検討会」の令和4年4月のとりまとめ資料(同検討会「無人航空機の目視外及び第三者上空等での飛行に関する検討会とりまとめ」)が参考になるので,こちらの情報を早めに読み込んで,どのようなサービスであれば実現可能そうか考えるのも一つかもしれません。

次回の投稿では,現時点で集められる情報の範囲で,どのような形のビジネスであればドローンを使ったデリバリーサービスが実現可能そうであるか,もう少し踏み込んで考えてみようと思います。

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